イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
「なにぼーっとしてんだよ。ここ、間違ったからやり直しな」
直倫が楽譜の上を指で押さえた。
「――間違った?」
「間違ってたな」
「まぁ、そんな厳密にやらなくてもいいんじゃない? コンクールではないんだし」
そこに、部屋の真ん中でヴァイオリンを肩に乗せた白臣が口を挟む。
彼は昔から遠子に甘いのだ。
だが直倫は容赦ない。
「駄目だ。遠子はできるくせして、右から左に流して忘れちゃうんだ。間違いは間違いだってちゃんと理解しないと、同じミスを繰り返す」
けれど直倫の指摘はもっともで、今だって、遠子は完全に聞き流していた。
「できるくせにやらないのはいけない」
直倫は憤慨している。
なぜ直倫が遠子のミスを自分のことのように怒るのか、怒られているくせに時々不思議になるのだが、嫌になったことは一度もない。
(これはパパやママといっしょ……わたしのためだから)
昔から、瞬発力はあるが、集中力が長続きしない。
両親からいつも注意を受けているが、注意されたくらいで治るのなら誰も悩んだりしない。
次の瞬間にはもう、興味の対象がどこかに移っている……。