イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
なにか夢を見ていたような気がするが、目が覚めた途端すべてがふわっと霧のように消えてしまった。
とても懐かしかったような、悲しいような、胸がぎゅっと締め付けられるような――。
(あれはなんだったんだろう……)
遠子は言われるがまま目を閉じる。
そして唇が触れ合い、やっと目が覚めた。
「一応断りをいれたぞ」
「そうだね……」
(確かにそんなことを昨晩話したっけ。些細な約束を律儀に守るって、直倫らしいかも……)
「なにがおかしいんだよ」
「ううん、なんでもない」
「ふぅん……」
けれど直倫はあえて追及もせず、へらっと笑う遠子を見て、どこか嬉しそうに目を細める。
その顔を見て、妙に懐かしいと思うのは、大人になったからだろうか。
そういえば昔から、直倫は言葉が多いほうではなかった。
遠子は思ったことをすぐ口にするタイプなので、ある意味バランスがとれていたのかもしれない。
(眼鏡事件がなかったら、私と直倫ってどんなふうに友人関係を続けていたんだろう……)
幼馴染として、結婚相手として、とりあえず少しくらいは好かれているとわかったけれど、それは居心地がいいからだろうか。
居心地がいいから、結婚するのだろうか。