夢の言葉と陽だまりの天使(下)【夢の言葉続編③】
【中庭】

”バロン”は記憶喪失のフリをしていたから、あれも演技だったのかも知れないけど…。
私と二人きりの時に時折見せてくれた彼の姿は、偽りだと思えない。

思い返せば、私はヴァロンの事をたいして何も知らない。
夫婦になっても一緒に居られる時間も少なかったし、今は長期任務で離れ離れ…。
結局ヴァロンの両親の事もレナとレイに少し聞いただけで、彼の口から直接聞いた事はなかった。

傍にいるとつい安心感から満足してしまっていたけど、離れて過ごして改めて思った。
色々聞きたい。
ヴァロンが帰ってきたら、たくさん話をしたい。
ヒナタも産まれて、これからはもっと家族として、身も心も寄り添え合える関係で在りたい。


「…ヴァロン。」

気付いたら、木の上を見上げたまま彼の名前を呼んでいた。
返事が返ってくるような気がして、耳を澄まして目を閉じる。

サアァ…ッ、と風が吹いただけで返事なんてない。
当たり前だ。
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