僕に、恋してみたら?
「凄いよね。何度シャッターをきっても気づかない集中力だった。カシャッて音、聞こえてなかったよね」
「うん。まったく」
聞こえていたら振り返る。
いや、これは……上から撮られているみたいだから、気づいていたら見上げただろう。
でも、そんなに何枚も撮ったの?
「飾ってあるのが後ろ姿でよかったー」
「顔が写ってるのは、僕の手元にだけ保存してる」
「そりゃ、そんなの飾られたら恥ずかしいよ……」
「っていうかね。僕が、誰にも見せたくないからだよ。あのときの茉帆の一生懸命なところ、真正面から見ていたのは僕だけ。僕だけの思い出にしておきたくて」
「えぇっ……?」
ふわっと桃惟の大きな手が頭にかぶさり、撫でてくる。
「と、桃惟!?」
「頑張ったね、茉帆」
「……!!」
「あらためて、お疲れさま。凄く大変だったでしょ?」
「え……」
「だって茉帆、こういうの自らすすんで出たがるタイプじゃないと思うし。ほんと、よく頑張ったと思うよ」
「……っ、」
桃惟の、その言葉に――涙が、溢れた。
劇を終えた直後、舞台袖でなんとか泣かずに済んだのに。
こらえられたのに。
どうして桃惟の前では、泣いちゃうんだろう。
「よしよし」
「なんかこれ、子供みたい……」
頭を撫でられるだなんて。