僕に、恋してみたら？

そりゃあ、

「好きか嫌いかでいうと……好きだよ？」


嫌いになる理由が、見あたらない。

興味を抱いている。

水上桃惟という人間に。


「駄目よ。あの人のこと、好きになっちゃ」


――！


お姉ちゃんが真顔になる。とても冗談を言っているようには見えない。


「なん……で？」

「なんでもよ。あの人の噂、知らないの？」

「あ、えっと……女の子が好きとか。色んな女の子と遊んで、1人の女の子とまともに付き合わないとかだよね」

「知ってるなら話がはやいでしょ」

「でも、噂だから。わたしは目でみたものを、信じたいというか……」

「絶対に、あの人と関わっちゃ駄目」


そりゃあ……水上先輩は、女の子と健全なお付き合いをしていないかもしれない。

それでお姉ちゃんが心配になるのも無理ないのかもしれない。

でも、相手も〝先輩は本気じゃないこと〟に同意の上でキスとかしているなら、先輩が完全に悪だとは思えない。

……なんて考え始めているわたしは、脳がマヒしてしまったのだろうか。


「友達としてなら、問題ないよね」

「まさか茉帆、友達になったの？　水上桃惟に会ったの？」