死にたがりは恋をする
 {小野寺雨矢サイド}

 死にたがり、は、俺かもしれない。いや、俺なんだ。

 俺は馬鹿だ。

 ただ、俺は、愛してしまったんだと、そう思っていた。

 俺が、父さんに、愛してるよ、っていうと、ああやって殴られるんだ。だから、あれが父さんの愛情。だから、あれが俺なりの愛情表現だったんだ。

 俺は、間違ってないと、自分に言い聞かせていたんだ。

 嗚呼、馬鹿だ。馬鹿らしくて仕方ない。

 死のう。

 ちょうど帰路に踏切があって良かったよ。

 さようなら、俺が12年間愛し続けた愛した人。

 踏切がカンカンと点滅しながら叫んでいた。電車が輝る目を見開いて驚いているのが見えた。

 これが、俺自身の報いだ。

 今まで、ずっとカイトを縛っていた。だから、解放してあげないとならないんだ。俺という存在から、永遠に。

「俺は__」

 無性に涙が溢れてきた。

 また、泣いちまったな。

「カイトが__」

 もう、死ぬんだから、未練を残したらまたカイトを縛るんだから、本音をせめて一回だけ言ってやろう。

「カイトが、好きだぁぁ!!!!!」

 さよなら、カイト。

 電車が来たな、良かった。
 
< 13 / 20 >

この作品をシェア

pagetop