死にたがりは恋をする
 {家}

「うぐぁぁっ!」

「や、め、ああああ!」

 泣いているのは、僕だ。

 腕がズキズキする。包丁で切られてる。

 哀しい、という感情も、何も感じなかった。

 ただ単に、切られているだけ。

 心も、何も、感じない。そんな、ハズ、だった。

 痛かった。今までなにも感じなかったのに、何故か、心が張り裂けそうに、痛かった。

 何か、僕は馬鹿なことをしてしまったのだろうか?

「あぐぁああっ!!」

 そんな些細な想像は、自分の叫び声によって掻き消された。

 なんで、こんなに叫んでいるにもかかわらず、誰も助けに来ないのだろうか?この家は母が案を出したらしいから、そのせいなのだろうか。たたえば、防音素材のものを全体に使ったとか、特殊なフィルターでもかけているとか。それとも、母が怖いとか。もし聞こえているんだったら、それが一番正しいと思う。自分の産んだ子供を傷つけているような母だ。もしかしたら、近所でも有名な親になっているかもしれない。それだったら、皆気付きながらも、恐怖心故に手を出せないのだろう。

「う、ガッ!!」

 口から血の味が溢れそうになり、必死でこらえようとした。だが、無理だった。

 駄目だな、もう。

 全身から力が抜ける。今日もまた、気絶してしまったようだった。
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