お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
「遠慮とかいーって。暑いんだし水分摂らなきゃ倒れるよ?」
「でも、浅野くんに悪い……」
渋る私に、浅野くんが困ったように笑う。
「俺は、花岡が倒れるほうが心配。もらってくれない?」
と、懇願されるように言われてしまい。
こうなっては、私の負け。
「う………ほんとにいいの?ありがとう」
私がそう言うと、浅野くんは爽やかな笑顔でお茶を手渡してくれた。
汗が滲んで火照った手のひらが、ペットボトルを掴んでいるところからひんやりとして気持ちいい。
………ていうか、このお茶、開栓前だ…。
ふと考える。
もしかして、私がお茶がないことに気づいて、自販機に買いに行ってくれた、とか?
ないない、と1度は首を振りつつも、
いや浅野くんならありえるかもしれない、とも思えてきて。
なにせ、浅野くんは面倒見がいいんだもの。
ありがたみを感じながら、もらったお茶のペットボトルを開け、口をつけたとき。
「ところで、花岡、何見てたの?」
チラリ、とフェンスの方に目を向けながら何気ない調子で尋ねてきた浅野くん。
その “何気ない” 質問に、私は思わずお茶を吹き出しそうになった。