お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
*

一年の教室から食堂までは少し距離がある。


ぼんやりとしながら、一人で廊下を歩く。



……利樹はどうしたかって?




『あ、でも、ごめん!俺トイレ行ってくるから先行って待ってて!』




なんて半ば叫ぶようにトイレに駆け込んだ利樹なんて、置いてきた。



どうせすぐ来るだろ。




それにしても腹減ったな、なんて思いながら、歩いているとどうしようもなく耳障りな声が聞こえて足を止めた。




8組の、教室の前で。




「ねーっ、ひまりちゃんもそう思わない?!」



「え…っ!?たしかに、お似合いだとは思うけど……」




俺が耳を傾ける必要もない、ころころと話題を変える、よくあるガールズトーク。



なのに、なぜか心に引っかかる。




“なぜか” なんて、その理由は、話を振られて戸惑ったようにぱちぱちと瞬きを繰り返しながら答えるソイツに決まってるけれど。




「だよねっ、やっぱりあの2人絶対なんかあるよね〜っ」


「う、うん……?」


「ひまり、絶対なにもわかってないよね」




俺が率直に思ったことと、全く同じことを早坂が口にする。



「え!?そんなことないよっ、夏奈ちゃんってば!」



頬を膨らませて抗議する、そいつ。


やっぱり、バカすぎて手に負えない。


隣にいる早坂の気持ちが手に取るようにわかって、ふ、と口角をあげた。




「あ、ねぇっ、夏奈ちゃん!今日ね、駅前のパン屋さんの新作買ってきたの!」



あいつに見つかったら面倒だから、半分閉まった窓の影で身を隠しながら聞いている。



だから、あいつの顔はよく見えねぇけど……




たぶん、この喋り方だと、ものすごいドヤ顔なんだろうなと、容易に想像がついた。



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