お前のこと、誰にも渡さないって決めた。

慌てる私を見下ろす翔太くんは、全く動じてなくて。


口の片端をあげて、にやり、と笑った翔太くんは。




「どうする?俺とデートする?」



そう言いながら、赤いチケットを目の前でちらつかせる。



「そしたら、もれなくこれ、行けるよ?」


「っ!」




うぅ……っ、そんなのずるい。



さっきまで行かない方に思考が傾いていたのに、翔太くんがありえない切り札を使ってくるから。




ぎゅ、と目を閉じて一瞬考えたのち、私の頭は決断を下した。





「い……、行かせてください……っ」





私の口が発したのは、YESの返事。



だって、私は甘いものには勝てないよ。

一日くらいなら、翔太くんと会話だって弾むかもしれないし。




そしたら、もっと仲の良い友達同士にもなれるかも。




「よかった、断られなくて」



私の返事を聞いた翔太くんは、ほっとしたように微笑む。



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