お前のこと、誰にも渡さないって決めた。


その表情は、柔らかい笑顔なのに。

翔太くんの声は今にも泣きだしそうなくらい切なくて、ぎゅっと心が締め付けられる。




「絶対、後悔させないから。

誰よりも大切にするし、
泣かせないし、

365日毎日笑顔にするから。


だから……」




翔太くんが、小さく息をついて。




「だから、俺を選んでくれないかな」




その言葉と空気に、どこか既視感を感じて。




『絶対後悔させないから。俺が楽しい一日にするよ。……だから、』




これは、あの日─────、翔太くんにデートの話を持ちかけられた日の台詞の続きなんだということに気づいた。




翔太くんの彼女になったら……、自分のことをこんなにも想ってくれている人の彼女になれたら。



きっと、それはすごく幸せなことだと思う。




翔太くんは、きっと宣言通り、

大切にしてくれて、悲しむようなこともしなくて、毎日笑わせてくれるんだろうな。



たしかに、後悔はしないかもしれない。





だけど、


だけど私は───────。





自分の中から自然と現れた、その答えを真っ直ぐに翔太くんに届けるために顔を上げた。




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