お前のこと、誰にも渡さないって決めた。


自分の気持ちを言葉にしようと、口を開いたけれど、声に出す前に翔太くんが、

しぃっと、人差し指を唇にあてて、私を制した。



押し黙った私に、翔太くんが目を伏せて言った。




「………知ってるよ。ひまりちゃんが、光希を想ってるってことくらい」



「っ……!どうして、」





言おうとしていたことが、簡単にバレていたことに焦って目を見開く。


翔太くんは、ふっと口角を上げて。




「普通わかるよ。────ひまりちゃんが、ずっと光希のことを見ていて。そしてそんなひまりちゃんを俺がずっと見ていた、ただそれだけのことだ」




それぞれ想いは、見事に一方通行だった。




みっくんに恋をする前、

私、恋って甘くてふわふわしたわたあめのようなものなんだと思っていたの。




だけど、現実はこんなに残酷で。



「ねえ」


「?」




翔太くんが、最後の望みをかけるように私を見て言葉を紡ぐ。




「俺じゃダメかな」




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