お前のこと、誰にも渡さないって決めた。

「でも、こうやって部活関係なく来るのは久しぶりだから、私も結構楽しみかも」

ふふ、と笑いながら言う夏奈ちゃんに、私はぎゅっと抱きついた。


「ひまり、暑いから離れて……」

「はぁーい」


身をよじる夏奈ちゃんから、離れると、夏奈ちゃんは腕で汗を拭っていた。

たしかに暑いもんね、今日。


でもね、今のは夏奈ちゃんが悪いんだよ?
だって、まるで “私と一緒に来られて嬉しい” っていうような口ぶりだったから……!


……自意識過剰かもしれないけど。




「4組と8組ー!そろそろ移動するから、各自、指定のバスに乗れよー!」


学年主任の先生の声。


私たちの会話から、薄々察してくれていると思うんだけど、今日は臨海学校の1日目。

先週のテストも、無事に(?)……乗り越えて、今さっきバスで海岸に着いたところなの。



「…!ひまり、ぼーっとしてるけど、8組ってうちらのクラスじゃん!! 早く行かなきゃ!!」


夏奈ちゃんがハッと気づいて、私の腕を引いてダッシュし始めた。


わわっ………!
あまりのスピードに、足がもつれそうになる。



それもそのはず。
元運動部の脚力に、運動音痴の私の足が着いていくわけがないんだもん。
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