お前のこと、誰にも渡さないって決めた。

「うん、それはそうなんだけど、とりあえず離れよっか?」


ガラスケースにべたぁっと貼り付いた私を引き剥がしながら苦笑したのは、もちろん夏奈ちゃん。


だって……!
仕方ないよ!



目の前のガラスケースに並べられているのは、色とりどりの鮮やかで繊細なガラス細工。


迂闊に触ったら壊れちゃいそうなオブジェとか。


キラキラ光って綺麗なペンダントとか。



見るだけで目が輝いちゃう。



「それで……苦戦してたみたいだけど、無事に終わったんだ?」


夏奈ちゃんの質問に、大きく首を縦に振った。



そう、今はもうガラス細工体験が終わったあと。

体験が終わった人から順番に併設されているアトリエを見学できるようになっていて。

私は夏奈ちゃんより、だいぶ遅れて、やーっと今終わったんだけど……。



……これがまぁ、大変だったわけです。




「ひまり、ぜんっぜん膨らんでなかったもんね〜」


……それは、夏奈ちゃんが膨らみすぎなんだよ……と毒づきたい衝動に駆られた。



体験は、なにを作るか、何種類かの中から自由に選べるようになっていたの。


それで、夏奈ちゃんとお揃いのコップを作ろうって決めたんだけどね?


コップって、ほら、内側が空洞でね?


あの形にするために、息をふぅーーっと入れて膨らますみたいで。(今日はじめて知ったんだけど)


中学校時代、運動部で肺活量がある夏奈ちゃんはすぐに膨らませて次の作業に移っていたんだけど、万年運動音痴の私はそんなわけにはいかなくて。


面白いくらいに膨らまなかったというわけ。

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