あまりさんののっぴきならない事情
 ちなみに、大学のときは、学食で食べていたので、お弁当箱は使っていない。

 街路樹の陰から出て来た尊は呆れたように溜息をついて言う。

「帰ってきなよ。
 もう見合いは断ったんだろ?

 そりゃあ、父さんの会社的にも、相手の人と結婚した方がよかったみたいだけど」

 うっ。

「でも、もう父さん断ったから。
 これで会社が倒れても、それがあまりの意志ならって」

「待って。
 うちの会社、別に経営怪しくないよね?

 なに私に罪の意識を抱かせて帰らせようとしてんの?」
と言うと、バレたか、と言う。

 酔ったノリで適当に娘の結婚を決めたくせに。

 同窓会に来ていた恩師が、わしが仲人をしようと言い出したりして、引っ込みがつかなくなったようだが。

 所詮は、酔っぱらいの戯言。

 そのまま流せばよかったのに、何故、意地で娘を犠牲にしようとする、と思っていると、

「受ければよかったじゃん。
 姉ちゃん好みの美形で、家も釣り合ってるし。

 ケンブリッジ出てるんだろ?」
と尊が言い出す。

 あんたも釣書読んだのか……。
< 11 / 399 >

この作品をシェア

pagetop