あまりさんののっぴきならない事情
「わかったよ、姉ちゃんの決意は」
と言ったあとで、尊は、あまりの手を両手で握ってきた。

「このまま、客として来た妙な男とくっついて、借金取りに追われたり、おかしな仕事を始めたりしても、姉ちゃんは、僕の姉ちゃんだからね」

「……待って。
 ちょっと年頃の娘らしく、一人暮らしして、素敵なカフェでバイトしたいって思っただけで、なんで、私、そこまでの転落人生……?」

「待ってるよ、お姉ちゃん。
 いつでもあそこはお姉ちゃんのおうちだよ」

 なにがあっても帰ってきてね、と言って去っていく弟の背に、
「だから、なんで、そんな転落人生……?」
とあまりはひとり呟いた。






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