あまりさんののっぴきならない事情
 



 あー、おいしかった。

 お弁当を食べたあと、あまりは、淡いピンクのビーズクッションの上に転がった。

 テレビはいつもは見ないバラエティ番組をやっている。

 本当は歴史を検証したりする番組の方が好きなのだが、ひとり暮らしをするようになってからは、つい、より騒がしい番組を選んで見てしまう。

 狭いワンルームの、灯りのついていないキッチンの方を見た。

 静まり返ったキッチンを見ていると、テレビはわあわあ騒いでいるけど、それは別の場所での出来事なんだなと実感する。

 あまりは目を閉じた。

 家に帰ってひとりで食事するのは、確かにちょっと寂しいけど。

 でも……。

 目を開け、あまりの好物ばかりが詰まっていたお弁当箱を手にし、よし、と立ち上がる。

「片付けるぞっ」
と声に出して言ってみた。

 ひとり暮らしだと、片付けなくても誰も文句を言ってこないので、ぐだぐだになりがちだからだ。

 それにしても、仕事場だと、皿洗いもトイレ掃除も苦じゃないのに、家だと途端に億劫になるのはなんでだろうな、と苦笑しながら、あまりはキッチンの灯りをつけた。








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