あまりさんののっぴきならない事情
「おにいさん、台湾に居るのか?」

「今、出張で。
 上司に怒られながら、呑気に船で出かけました。

 台湾は近いからいいけど、お前、出張先がヨーロッパでも船で行く気かと言われたようなんですが」

「ちょっとしたバカンスだね……」

 おにいちゃん、動き回れない飛行機が苦手なんで、とあまりは言う。

 しかし、上司が居るのか。

 南条の跡取り息子だからって、ふんぞり返ってるわけじゃないんだな、と見たことも会ったこともないあまりとあまりとの兄に好感を抱いた。

 ……まあ、海里も頑張っているのは知っているんだが。

 なんかあいつ、顔が偉そうだからな、と思う。

「で、お土産、なにを頼んだの?」
と問うと、

「茶器を頼みました。
 おにいちゃん、ああ見えてセンスいいので」
と言ってくる。

 いや、しょうもない電話だとか言っていたわりには、ちゃっかり頼んでるね、と笑う。

 まあ、こんな妹なら、喜んでいろいろ買ってあげたくなるかな、と思った。

 おにいちゃん、とか言って甘えてきてくれそうだし。

 と、妄想に浸っている間に、あまりはスープを全部平らげていた。

「ご馳走さまでした」
と手を合わせ、洗いに行こうとする。
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