あまりさんののっぴきならない事情
「海里さん、お姉さんがいらっしゃるんですか?」

「ああ、麻理子さんって言って、すごく目立つ美人だよ。
 海里とは、また顔の感じが違うけど。

 結婚してイギリスを離れてたはずだけど、たまに来てたかな」

 そう話していて、ん? と思う。

 いや、聞いたな、大崎って、と思ったのだ。

「……大崎、大崎」
と口の中で呟く。

「あ、大崎っ」
と叫ぶと声が大き過ぎて、あまりが、ビクッとしてしまう。

「思い出した。
 大崎って、麻理子さんだよ。

 確か、結婚して、大崎麻理子になってたよ」

「えっ、じゃあ、大崎さんって」

「海里の親戚だろ」

 そう言うと、あまりは、ほっとした顔をしていた。

 いや、待て。
 親戚だからって、義兄の家族なら、海里とは血のつながりはないぞ、と思ったのだが、とりあえず、赤の他人でない、というだけで、少し気が晴れたようだった。
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