あまりさんののっぴきならない事情
 っていうか、お前、やっぱり海里が好きなのか? あまり、と心の中で問いかけていると、また、あまりのスマホが鳴り出した。

 まだテーブルに置いていたあまりはそれを取り、
「だから茶器だってば、おにいちゃんに任せ……

 ……海里さん?」
と言っていた。

 途端に表情が明るくなる。

 そうか。
 さっき、海里からかと思って電話に出たら、兄貴だったから、しょんぼりしてたんだな、と気がついた。

 なんなんだ。
 ラブラブじゃないか、いつの間に、と思う。

「海里さん、あの、大崎さんって、海里さんのご親戚ですか?」

 唐突にそんなこと言い出したあまりに、はあ? という海里の声が此処まで聞こえてきた。

「あっ、そうなんですか。
 いえ、なんでもないです」
と言うあまりの表情は明るい。

 ……元気のないあまりは見たくないと思っていたが、他の男のお陰で元気になるあまりも見たくなかったかな、と思ってしまう。

 大崎が何者だか知らないが、海里はあまりにメロメロだろ。

 なにも心配しなくていいと思うが、と思ったが、もちろん教えてはやらなかった。




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