あまりさんののっぴきならない事情
 



 海里さんから電話だっ。

 あまりは知らずテンションが高くなっていた。

「あっ、そうなんですか。
 いえ、なんでもないです」
と言ったあまりに、海里が、

『ところで、今日は暇か?』
と訊いてきた。

 つい、
「暇ですっ」
と勢い良く答えてしまう。

 あっ、しまった。

 海里さんを警戒中だったのに、と思ったが、遅かった。

 いや、まあ、本当に暇なのだが。

『今日は少し時間が取れそうだから、お前のうちに行ってもいいか』

「い、……家はちょっと」
と言うと、海里が笑うので、なにかと思ったら、

『そうかそうか。
 男を知って、警戒することを覚えたか。

 感心だな』
と何故か褒めてくる。

『その調子でおかしな男を部屋に上げるなよ。
 成田とか成田とか成田とか……』
と呪文のように繰り返してくるので、いや、成田さん、すぐそこに居るのですが、思ったが、幸い聞こえてはいないようだった。
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