あまりさんののっぴきならない事情
あまりが通っていた古い幼稚園の建物の裏。
誰も居ないそこで、幼い海里がフランス語でなにやらペラペラしゃべってくる夢を見た。
わ、わからない、と思っていると、海里が小馬鹿にしたように鼻で笑う。
ゆっ、ゆるしませんーっと目を覚ますと、朝だった。
あまりはひとりでラグの上の布団で寝ていた。
そうか。
夢だったか。
なんて夢だ……。
「おはよう」
とキッチンのカウンターの向こうから顔を覗けた海里が言ってくる。
「あ、海里さん、おはようございます」
海里は布団をたたんで抱えてくる。
「そっち寒くなかったですか?」
大丈夫だ、という海里と共に、着替えたあと、一緒にパンを焼いたり珈琲を淹れたりする。
「これ、うちの店のパンなんですよ」
「だろうな。
食パンでも美味いな」
こんがり焼けた厚切りの食パンの上にはたっぷりの溶けたバター。
指でちぎると、ふわっと湯気とともに、真っ白でふかふかのパンが現れる。