あまりさんののっぴきならない事情
 



 夕食まで少し時間があった。

 ちょっと風呂に入ってこようと海里が言うと、寺坂も付いてきた。

 あまりに付いて、女性陣ももう一度入ると言う。

 海里は、寺坂と素敵な庭園の見える廊下を歩きながら、此処へ来るまでのことを語っていた。

「二人で同じボトルで呑もうと言ってから、あまりが赤くなって目を合わさないから。

 なんだかこっちまで気恥ずかしくなってきて。

 お互い、一口呑んでは、目を見ずに、すっ、と相手のテーブルに置き。
 一口呑んでは、すっ、と相手のテーブルに置き……

 を繰り返していた」
と言うと、

「なんの儀式なんですか、それは」
と寺坂が苦笑いする。

「そういえば、支社長、指輪とか、あまりさんに渡されたんですか?」

「それがまだなんだ」
と海里は渋い顔をした。

「あまりの好みを訊いてから、と思ってるんだが」
と溜息をつくと、横から突然、寺坂の気配が消えた。

 振り向くと、寺坂は青ざめた顔で固まっている。
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