あまりさんののっぴきならない事情
 



 海里が風呂から戻ると、あまりはもう部屋に居た。

 せっせとキャリーバッグの中の服をハンガーにかけている。

 海里は暗くなった窓の外を見た。

 あのときの露天風呂がある。

 せっかくだから、お金を追加して、同じ部屋にしてもらったのだ。

「今度は一緒に入れるな、風呂」
と言うと、あまりの動きがピタリと止まる。

 えーと……という顔で振り返ってきた。

「今更、嫌だとか言わないよな」
と腕を組み、脅すように見下ろすと、掛けかけていた服を手にしたまま、あまりはチラと露天風呂を見たあとで、

「一ヶ月でずいぶんと汚れた女になってしまいました……」
と呟く。

「じゃあ、お前、世の中の夫婦はみな汚れてるのか」
と言うと、

「いえ、それは結婚してらっしゃるわけですし」
と言う。

 それだよ、と思っていた。

 だから、俺は何度もプロポーズしてるんだが!?
と思いながら、あまりを見下ろした。







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