あまりさんののっぴきならない事情
「今度は一緒に入れるな、風呂」
と言う海里に、あまりはピタリと動きを止めた。
「今更、嫌だとか言わないよな」
えーと……。
でも、外なんですよ、そのお風呂。
周りは山ですが、猿とか見ているかもしれません、とあまりは思う。
そのあと、海里がごちゃごちゃ言ってきたので、
「いえ、それは結婚してらっしゃるわけですし」
と言ってしまい、
うっ。
しまった、と思った。
こ、これではなにやら、結婚を催促したみたいです、と上目遣いに海里を見上げる。
海里に自分の思いが伝わっているのかいないのか、彼もまた無言で自分を見下ろしていた。
そのとき、ピンポーン、と部屋のチャイムが鳴った。
「あまりさーん、支社長。
そろそろ行きましょうー」
と言う桜田の声が聞こえる。
「いっ、行きましょうかっ」
とあまりは、キャリーバッグの蓋を慌てて閉めて、立ち上がる。