あまりさんののっぴきならない事情
 



「今度は一緒に入れるな、風呂」
と言う海里に、あまりはピタリと動きを止めた。

「今更、嫌だとか言わないよな」

 えーと……。

 でも、外なんですよ、そのお風呂。

 周りは山ですが、猿とか見ているかもしれません、とあまりは思う。

 そのあと、海里がごちゃごちゃ言ってきたので、
「いえ、それは結婚してらっしゃるわけですし」
と言ってしまい、

 うっ。
 しまった、と思った。

 こ、これではなにやら、結婚を催促したみたいです、と上目遣いに海里を見上げる。

 海里に自分の思いが伝わっているのかいないのか、彼もまた無言で自分を見下ろしていた。

 そのとき、ピンポーン、と部屋のチャイムが鳴った。

「あまりさーん、支社長。
 そろそろ行きましょうー」
と言う桜田の声が聞こえる。

「いっ、行きましょうかっ」
とあまりは、キャリーバッグの蓋を慌てて閉めて、立ち上がる。




< 384 / 399 >

この作品をシェア

pagetop