肉食御曹司に迫られて
奈々は、一人になり、まだカフェにいた。
(― どうしよう。家に帰って一人になると、余計なことを考えそうだった。)
結花は今日、仕事のはずだ。

奈々は、席を立つと、人の多い表参道を歩いていた。
「ねえ、ねえ、暇ならどっかいかない?」
そんな、ナンパにすら、答える気にもなれない。
涙が落ちた…。

「ななちゃん?」
呼ばれて、顔をあげると、笑顔を向けた男の人がいた。その隣には、かわいらしい女の子。
「…?」
「あっ、ごめん。えーと。ナンパじゃないので。」
とその人は、笑った。
「わかるかな?湊の友人の水澤晃と言います。」
その人は、優しい笑顔で言った。
「こっちは、」と言いかけると、隣にいた女の子が
「枡谷 絢香です。始めまして。」
と、微笑んだ。

「あっ、水澤 奈々です。同じ苗字ですね…。でもどうして?」
晃は、答えに悩んだが、
「俺も、あの江の島のお店で奈々ちゃんを見てたから。湊からも話を聞いてたし。もしかして…って。」
「そうなんですね。変なところ見せてすみません。」
というと、涙をぬぐい、少し笑った。
「晃くん、立ち話もあれじゃない?」
と絢香は言った。
晃は、奈々の方をみると、
「時間…大丈夫?よかったら、落ち着くまでお茶でもどう?」
奈々は、少し悩んだが、一人になりたくないのと、晃の優しい笑顔に、
「こちらこそ、デート中にすみません。」
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