ドメスティック・ラブ
天気の良い行楽日和の週末ではあるけれど、時間が早めのせいか道も混み合ってはいなかった。信号のない道を車は快調に走って行く。
サンドイッチを食べ終わった後は一緒に買って来たミントガムを噛み、流すラジオの選局をジャンケンで決める。聞こえてくる曲やトークにあれこれとつっこみながら車内で二人で笑い転げる。冷たいカフェラテのお陰で頭もシャキッと目が覚めテンションが上ってきた事もあって、素直に楽しかった。
結婚する前から、二人の時もそれ以外の誰かがいる時でも、まっちゃんの車に乗っている時はいつもこんな感じだった。朝起こされて連れ出された時に感じた懐かしさが一段と強くなる。歳を取っても以前の様に遊びに行こうと言ったのを、実践してくれている。
素を見せられて、それでも引かない相手と付き合えと昔言われた事を思い出す。言ったのは他でもないまっちゃんで、もちろんそれを言った時は私と付き合う、ましてや結婚する事なんて絶対に想定してなかったはずだ。でも確かにまっちゃんの前でなら素の自分のままでいられる。今更こんな私に引かれる事もないだろう。それで一緒にいて昔と変わらずこうやって楽しめるなら、もしかして私にとってまっちゃんは最強のパートナーなのかもしれない。ただまっちゃんが私の面倒を見るのが恋愛感情なのか、父性本能や兄妹愛に近い雰囲気のものなのか境界線が曖昧な所が問題だけど。
運転しているまっちゃんの横顔をのぞき見る。手をつなごうが、抱きしめられようが、キスされようが、やっぱり意志を明確にする言葉は重要だ。
「ん、何?」
私の視線に気付いたまっちゃんが少しだけ顔をこちらに向けた。
「何でもない。……あ、今って丁度紫陽花見頃じゃないの?どっかでいい感じに見れる所ないのかな」