ドメスティック・ラブ
まっちゃんに見返されて視線を逸らした先、道端というかガードレール向こうの山の裾にラベンダーがかったピンク色をした紫陽花が二三本咲いていた。もちろんここは高速道路で車は百キロ出して走行中なので、華やかな色合いは目の奥にピンクの残像を残してあっという間に後方に通り過ぎて行く。
「いいね、桜の季節はバタバタしてて何も出来なかったし、季節外れの花見と行きますか。検索してみろよ。早めに言ってくれないと出口で降りれないぞ。それともどっかで一度停めるか」
「とりあえず次のパーキング入らない?トイレ休憩したい」
窓の外を見ると、パーキングエリアまであと二キロの表示がある。それまでに出口はないので、そこで停めれば降りる場所の検討をつけられそうだった。
「了解」
方針が決まった所で携帯で花が見られる場所を検索する。進んでいる方向にエリアを限定しながら探して行くと、丁度よく紫陽花と菖蒲という季節の花が見られる観光名所があった。名前を直接検索し直すとマップも一緒に出て来て、そう遠くない場所に温泉街もある事が分かる。
「見っけ。温泉もあるよ、ここいいかも」
「停めたら見せて」
「はーい」
行き先の分からないドライブは楽しい。でもこうして思いついた目的地に合わせて柔軟に計画を変更するのもまた楽しい。
疲れをおしてドライブに連れ出してくれたまっちゃんの気持ちに報いる為にも、目一杯楽しもうと思った。
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