ドメスティック・ラブ
……あれ?
まっちゃんが私に触れないのは、彼にとっての私が手のかかる同期とか妹分とかその範疇を出なくて、まだ『ライン』を越えてないからだと思ってたんだけど。
「え、結婚しといて今更?」
「親達のせいもあるけど、どうみても勢いで押し切った感あったし。千晶の覚悟が決まってからと言うか、ちゃんと」
「キスはしたくせに」
「あれは……」
私の指摘にまっちゃんが少しだけ顔を赤くして口ごもる。
「……酔っ払った千晶なんて見慣れてると思ってたけど、あの時のお前見て可愛いなと思ったんだよ」
可愛い……うわあああああ。
一瞬後に私の脳が言われた言葉を理解して、目の端と頬がかあっと熱くなった。多分目の前のまっちゃんに負けないくらい顔が赤くなったんじゃないかと思う。
だって今までそういう褒められ方した事なんてない。この間泣いた時だって頑なにその一言を言わなかった癖に!
初めて名前で呼ばれた時と同じあのむず痒さがぶり返す。
「ちょっ、やめてよそんな恥ずかしい事言うの!でもって何で今さら照れるの、キスした時は平然としてたじゃん!」
「言わせといて何を今更。てかお前が今更蒸し返すからだろが」
両手で顔を覆った私をまっちゃんが突付く。
もしかして私達は、お互いが知らない間にそれぞれ『ライン』を越えていたのかもしれない。