ドメスティック・ラブ
「一応私も大人なんで、ちゃんとやる時はやるんです」
「気をつけて帰れよ」
まっちゃんは胸を張った私の頭をもう一度ぐりっと撫でた。
立場逆転とか言いつつやっぱりまっちゃんはまっちゃんだ。
「はーい」
消灯時間は既に過ぎているので、音を立てない様にそうっとドアを開け、ベッドに座る彼に手を振ってから照明の落とされた暗い廊下に出る。
帰ると言うと特にひきとめられもせずあっさり送り出されてしまった。子供じゃないんだし明日には退院出来る事も決まっている以上心細いなんて事はないのかもしれないけれど、どうせならもう少し名残惜しそうな顔してくれたっていいのに、と思ってしまったのは秘密だ。
* * *
リンゴンリンゴン、とまた携帯が鳴る。私のだけじゃなくてまっちゃんのも。そして目の前にいるよっしーとさとみんのも。同じグループトークなので同時に受信するのはまあ当然だけど。
しかめっ面をしながらまっちゃんが画面を眺めている。
「ったく、だから言わなくていいって言っただろ」
「えー、こんなん言わずにいられるわけないじゃん」
よっしーに昨夜の内に連絡していたのは私だ。車を取りに行こうと思ったら、あのサービスエリアまで誰かに乗せて行ってもらわないといけない。