ドメスティック・ラブ
弁護士なんてやってる癖に意外と今は時間に余裕があったらしく、よっしーは午後休を取ってついでに私を病院まで連れて行ってくれた。さとみんを誘ったのはよっしーだ。さとみんも渡米の準備で忙しいだろうと思っていたけれど、引き継ぎはほぼ終わっているしどうせ最後に有給消化するんだからとこちらも午後の仕事を休んでくれたらしい。実際、まっちゃんは歩けるもののあちこち痛むと言っていたし薬を飲んでいたので、結局まっちゃんの車はさとみんが運転して家まで持って帰ってくれた。
今は車を置いてから改めて夕飯を食べに来た所。自分の車を運転して帰らなければならないよっしーと痛み止めを飲んでいるまっちゃんと妊娠中のさとみんはノンアルコール。私はと言えばそんな三人を尻目に遠慮なくビールのジョッキを手にしている。
「男前に撮れてるだろ?」
包帯やらガーゼやらあちこちにあてられた全身怪我人状態のまっちゃんを見て面白がり、その写真をサークルの皆に送りつけたのはよっしーだ。
実際の程度以上に見た目の痛々しさのインパクトが強いせいもあって、色んな人からひっきりなしに連絡が入る。まあ誰だって知り合いが怪我している写真を送って来られたら何事があったのかと思うだろう。「生徒とそれに絡んでた男の喧嘩止めに入って巻き添えくらった。見た目程大怪我じゃないのでご心配なく」という最低限の説明をまっちゃん本人が添えたけれど、それでも皆の反応は収まらない。
「こんな写真に男前も何もあるか。ヤンキーに吹っ飛ばされたとかかっこ悪過ぎるし……」
まっちゃんがしかめっ面で携帯を眺めている。
「冷静で穏健派のまっちゃんが喧嘩に巻き込まれて怪我するなんて嘘みたいなネタだからねー、そりゃ皆食いつくよね」
「さすがに俺もあんなに綺麗に吹っ飛ばされるとは思わなかったよ。そこまで反射神経悪いつもりなかったけど、やっぱ歳食って鈍ってんのかも」