ドメスティック・ラブ

「しまっちも成長してるし、まっちゃんならしまっちの事安心して任せられるし、心置きなく嫁に行けるわー」

 そう言ってさとみんは手にしたグレープフルーツジュースのジョッキを空にした。よっしーにメニューを取ってもらって、上機嫌で次のドリンクを選んでいる。
 お酒が入って少しテンション高めな私と、素面の三人。だからって温度差はなくて、例えノンアルコールでもこうやって友達と飲んで食べて語るのは楽しい。楽しいからこそ、さとみんが遠くに行ってこういう機会が減ってしまうのが寂しい。
 彼女の結婚話を聞いた時から感じている寂寥感が蘇って、鼻の奥が微かにツンと痛くなった。

「千晶」

 テーブルの向かい側で私の様子を眺めていたまっちゃんが口を開く。

「言うなら今だぞ」

 何の事を言われているかはほろ酔いの頭でもすぐ分かる。家で泣いた私を見ているまっちゃんは、私がさとみんの言葉に微妙に反応した事に気づいたんだろう。

「何急に……別に何も言わないよ」

「酔った勢いにして言っとけ言っとけ」

 まっちゃんが枝豆を片手に笑っている。

「今更言ったってどうしようもないじゃん」

「言わずにずっと燻ってるんだから一回爆発させてガス抜いといた方がいいんだよ。別にそれでさとみんを本気で困らせる事にはならないから」

「何、何の話?」

 それぞれカルピスソーダと烏龍茶を追加注文し終えたさとみんとよっしーが会話に参加してくる。

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