ドメスティック・ラブ
「今さあ、さとみん注文する時に『かるぴちゅソーダ』って……ジュースで酔ってんのかよって思ったわ」
「ちょっと噛んだだけでしょ!飲んでもないのに酔っ払うしまっちと一緒にしないでよ」
「二年の夏合宿のやつ?あれは酔ったんじゃなくて匂いにやられたんだってば……」
本人の言葉通り元々さとみんは私よりもずっとお酒に強いし、そもそも今日は飲んでもいない。けれど今日は普段の飲みの席での彼女より気持ちテンションも高くなっている。
私が泣きたくなる理由と、さとみんがはしゃぐ理由が同じならいいのに。
そう思ったら身体の中に沈めこんだ寂しさが一気に浮上してきて、我慢する間もなく涙腺が決壊した。
「さとみん~」
「何、どしたの……ってしまっち??」
「え、何いきなり泣いてんだよ。お前何かしたの?」
さとみんの肩にすがりつく私を二人が困惑した表情で見る。普段の私は泣き上戸なんかじゃないし、そもそも人前で泣いたりしないから尚更だ。
「俺じゃない俺じゃない。ほら千晶」
まっちゃんが苦笑いしながら私を促す。
「……結婚してもいいけど、アメリカなんて行っちゃやだ」
流れてきた涙と鼻水が口に入って、自分で思っていた以上に酷い声になった。頭の片隅の冷静な部分で、いい歳して居酒屋で酔っ払って泣き喚くなんてみっともないなと分かっていたけれど、アルコールの力を借りて一度流れ出した涙も言葉も既に引っ込みがつかなくなっている。