ドメスティック・ラブ
ずっと変わらずにいたかった。けれど容赦なく時間は過ぎるし、私を含めて誰もが歳を取る。周りの環境だってどんどん変化する。いつまでも学生時代の幻影を追いかけ続ける訳にはいかないんだろう。分かってはいるんだけど、それを素直に受け入れられるかはまた別の話だ。
「……私もさとみんについていく」
「え、いらない」
「それはダメ」
さとみんとまっちゃんの声がダブって、よっしーが烏龍茶を吹き出しそうになった。そのまま彼はテーブルにすがりつくようにしながらまっちゃんの背中をバシバシ叩き、必死で声を殺しつつ大笑いしている。
そりゃ言ってみただけだけど。一割、いや二割くらい本気が混ざってたのに。さとみん容赦ない。
「ったくしまっちは……この間会った時も何か変だなとは思ったけど。あのね、私だって寂しいよ。寂しくないわけないでしょ。たまにしか会えないどころか、向こう行っちゃったら知り合いなんていないんだからさ」
コツン、と頭頂部にさとみんの拳が軽く当たる。
そう言われてみればそうだ。私は家にはまっちゃんがいるし、よっしーや他の友達とも頻度は減っても会おうと思えば会う事が出来る。けれど海外で暮らすさとみん自身は、そう簡単にはいかない。家族とも友人とも離れて、寂しくないわけがない。
これまでその事に考えが至らなかった自分の幼稚さが今更ながらに恥ずかしくなる。
それを覚悟の上で、さとみんは彼について行く事を決めたんだ。だから全く迷いがない。
「うん……そうだね、ごめん……」