ドメスティック・ラブ
「うっそだあ、なんかいっつも余裕綽々じゃん!」
さらっとキスして来て、さらっと服脱がせて、まっちゃんに私みたいな妙な緊張があるようには思えない。
お風呂で寝てたのを救い出した時みたいな例外はあれど、元々冷静沈着が服着て歩いてるみたいなまっちゃんにテンパるイメージないし。
「人としてはいいやつでも男としては何か違う、とか思われたらどうしようとか。……考えるよ、俺だって色々と。だから精一杯余裕ぶってんの」
「……今更思わないよ、そんなの」
恥ずかしいのも緊張して強張るのも、恋愛感情が下敷きになっているが故だ。ちゃんと自覚したのに、今更違うなんて思う訳ない。
「なら俺は自分の奥さんを愛でたくて仕方ないので素直に甘えときなさい」
そんな事言われてこれ以上抵抗出来る訳がない。
だって緊張してるけど決して嫌なわけじゃない。ただただ照れ臭いだけなんだから。
完全には解けないまでも必死で力を抜こうとしているのが伝わったのか、まっちゃんが「本当に千晶は可愛いな」と笑う。多分私の顔は早くも真っ赤だろうけど、唇が身体に触れる内に段々と気にする余裕すらなくなっていた。
指がなぞっていく耳から首が火傷しそうに熱い。まっちゃんが触れる箇所全てが、心臓がそこに移動したかのように脈打っているのを感じる。
目が合って、見つめ合う事が照れ臭くて逸らして、どこを見れば良いのか分からなくてまた視線を戻すともう一度目が合う。
死ぬ程恥ずかしくて、胸が苦しくて、でもどうしようもなく安心する。さっきまであれだけ抵抗していたくせに今は離れるのが嫌で、私は必死で目の前の肩にすがりついた。