ドメスティック・ラブ
どうせなら軽く飲んで帰ろうかと話していたのに、思いがけず時間が空いてしまった。時計で確認すると時刻はまだ夕方五時前だ。外は相変わらず細い雨がしとしとと降り続いていて、ほんの少し肌寒い。
今日の夕飯は作らなくていい事になっていたけど、まっちゃん何時に帰るって言ってたっけ。この時間なら練習試合とやらももう終わっているかもしれない。
無意識の内に電話に手が伸びていた。
『もしもし』
五回のコール音の後にまっちゃんの声がして、何となくほっとした。
『何、どーした?』
「あ、ごめん……もう仕事終わった?」
『コーチを駅まで送って、今から帰るとこ。千晶、今日さとみんと会うって言ってなかったか?』
最初の内こそくすぐったかった「千晶」呼びも、まっちゃんが当然の様に使い続けるので二週間の内にすっかり慣れてしまった。そういう意味では一歩踏み出してしまえば何とかなるというさとみんの主張にも一理ある。
「うん、でもさとみんちょっと急用出来て帰っちゃったから私も帰ろうと思うんだけど、傘がなくて……まっちゃんも今から帰りなら駅で待ち合わせない?二人なら傘買うのも一本で済むし」
『……』
少しだけ、考え込むようにまっちゃんの声が途切れた。
あれ?傘忘れて出かけたの私だけ?