ドメスティック・ラブ

『今どこ?場所教えて。俺車で来てるから、迎えに行くわ。一緒に飯食って帰ろう』

「え、いいの?」

『帰ってから作るの大変だし、その方がいいだろ。たまにはデートでもしよう』

 場所を伝えると、そんなに時間はかからないからすぐ行く、着いたら連絡すると言ってまっちゃんの電話は切れた。
 ……デート。まっちゃんが口にしたその響きを頭の中で反芻してみる。
 結婚前に二人で会った時はいつも何かしら予定を詰め込んでいて、いつもバタバタ忙しなかった。もしかしたらこなさなきゃいけない用事のない、純粋な二人での外出って初めてかもしれない。
 少しだけ、胸の鼓動が早くなった。


*   *   *


 三十分程待って迎えに来てくれた車に乗り込み、向かった先はまっちゃんの職場である私立高校の最寄り駅の近くにある洋食屋だった。「何か食べたい物ある?」と問われ、「んーハンバーグとかクリームコロッケみたいなベタな洋食食べたい」と私が言ったせいだ。居酒屋やダイニングバーに行った事はあっても、まっちゃんと純粋に食事だけをしにお店に入るのは初めてなので何となく新鮮に感じる。
 ノンアルコールでと思っていたのに、飲んでいいよと言われて結局ハンバーグセットと共にグラスワインを一杯だけ注文してしまった。

「眼の前で飲まれると飲みたくならない?」

「別に平気。帰ってからビールでも飲むよ」

 つくづくよく出来た「旦那様」だなあと思う。別に以前と扱いが変わってるとは思わないけど、客観的に見れば大切にしてもらってると言えると思う。家事が決して得意じゃない私が色々やらかしても、文句一つ言われた事はないし。

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