キミの瞳に
ゆっくりと歩き出す春に電話をかける。
多分この距離から俺の声が春に聞こえることはない。
もしかしたら出てくれないかも、と思ったけど春は俺からの着信を取ってくれた。
「もしもし…?」
普通に話しているつもりでも春の事が心配でたまらない。
『朝木君…さっきは色々とごめんなさい…。
私…朝木君のこと諦める。
でも付き合えたのは私にとっては…っ…
す……ご、く……楽しくて…っ…幸せでし、た』
諦めるとか幸せでしたって…
別れるなんて一言も言ってないのに…
「ちょっと待って…」
『明日からは……
クラスメイトとして……よろしくね…。
そ、それじゃあ…』
プーッ…プーッ…と聞こえる電話の切れた音。
待ってよ…
そんなこと聞きたかったんじゃないんだよ…。
「…俺の方が諦めきれるわけないじゃん……」
俺は壁にもたれかかってしばらく呆然としていた。