失礼男の攻略法

一瞬なんて返そうか迷ったものの

「マンハッタンで」

いつも一杯目に頼むカクテルの名を口にした。さっきのレストランから仕事の話ばかりだったこともあって、田尻先生と一緒にいるような感覚に近くって、変に取り繕うこともないだろうと思ったのだ。

「さては、お酒強いんですね」

ちょっと砕けたような口調になった直樹さんは面白そうな顔をしている。

「強いというより、好きなんです」

正直に答えると、柔らかい笑顔で「それはいい」という直樹さん。

ちょっとだけ、その表情にドキっとしたのには気付かないふりをしておく。狸親父の策略にはまるのはゴメンだし、きっとこの人は安全そうに見えて危険なタイプだと思うから。

でも、そんな私の心の声なんておかまいなしに、2人で乾杯をしてから、直樹さんはちょっとづつ距離を詰めてくる。

「西田さんは今日来られるまで、叔父の企み、ご存知なかったんですよね」

そう言われると困ってしまう。確かにそんな話はあったけど、マヌケな私は今日がその場だって気付いてなかっただけなのだ。
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