失礼男の攻略法
29才にもなって浮いた話のひとつもないなんて、引かれちゃわないかなと不安になりながらも小さく頷くと
「千秋さん・・・」
カウンターの下で中西さんの手が伸びてくる。ドクドクと早く打つ胸の鼓動に静まって、と心で思っていると
「お待たせしました」
よく知る声が私と中西さんの間にできあがりつつあった甘い空気に割って入った。
私の前に置かれたグラスを見て、あれっと声を上げた中西さんを横目に
「千秋の一杯目はこれだろ?」
クール系イケメンだと巷で騒がれている顔に薄い笑みを浮かべている憎い男。
あー、やっぱり邪魔する気だ。
「えっ、千秋って」
前に立つバーテンダーと私を交互に見ている中西さんを無視して
「好きな飲み物くらい教えてやれよ。どうせ、また仕事すら教えてないんだろ」
私をたしなめるように言うバーテンダー。