10年愛してくれた君へ【続編】※おまけ更新中


余計なことを色々考えながら食べるものを決めた。注文をして、料理が運ばれて来るのを待つ。


それにしても二人きりは気まずい。どうして個室なんて予約したのだろう。


「あ…あの」


「何」


「予約、してたんですね」


「混んでたら時間の無駄だろ」


なるほど、予約にはそういう意図が…って、納得している場合じゃない。


「でも別に、個室じゃなくてもよかったんじゃないですか?」


「…何かされるとでも思った?」


決して表情を崩さない山下さん。それも一つ予感していたことで、実際に山下さんに口に出されるとぞくっとする。


「い、いやっ別に…」


「…お前、やっぱりバカだな。何も理由なく個室にするわけねーだろ」


「え、どういう意味ですか」


山下さんが答える前に引き戸が開いた。料理のいい香りが鼻を通る。


「お待たせ致しました」


ナイスタイミングだと思った。変な空気になる前に料理が来てよかった。


ほっと胸を撫で下ろしていると、料理に手をつける前に山下さんが口を開いた。



「…お前はいつから竹内が好きなんだよ」


「え?」


「竹内は何年も前からお前が好きだって木下から聞いてた。お前はどうなんだ」


そう言われ、私は正直戸惑った。春兄の本当の思いに気付く前に私は春兄のことが好きだった。


でも、春兄の10年の思いに比べると私の気持ちなんて及ばない。もちろん大好きなんだけど、春兄と付き合うまでに異性としての"好き"に気づいてからそう時間は掛からなかった。


私が春兄をそういう目で意識してからまだ半年にも満たないんだ。


「私は…」


「竹内の思いに応えるために無理やり好きだと思ってんじゃねーのか?ずっと幼なじみだったんだろ?断ったら気まずくなると思ってそうしたんじゃねーの?」


心無いそんな言葉にパッと顔を上げた。


そんなことはない。私は自分の意思でこうした関係を続けている。春兄が大好きだから、春兄と付き合ってる。


「やめてくださいそんなこと言うの。私はちゃんと春兄が大好きです」


こんな話はやめてくれ、と無言で料理を食べ始めた。それに続いて山下さんも箸を持つ。


しばらく無言が続く個室内。


フロアで従業員の人たちの慌ただしそうな声が障子越しに聞こえる。



「…お前、彼女として竹内のこと満たしてやれてんの?」


「はい?」


さっきから春兄との関係性にケチをつけてくる山下さんの真意が全く見えない。
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