10年愛してくれた君へ【続編】※おまけ更新中
しばらくすると若い警察官とベテランオーラを醸し出している警察官の2人がやって来た。
警察官の登場でただ事ではないと感じたのか、いつの間にかちらほらとギャラリーが集まっていた。
「このおっさんさっさと逮捕してくれよ」
山下さんは、おじさんの腕をつかんだまま警察官の方へと突き出す。その際変なふうに捻ってしまったのか、おじさんは顔を歪ませた。
「あなたが被害者ですか?」
ベテラン風の警察官が私に顔を向ける。ギャラリーに聞こえないようにか小さな声でそう言った。
「…は、はい」
そのようです。実際に撮られた映像を見たわけではないけれど。
「事務室の方へと一緒に来ていただけますでしょうか」
警察官と私、山下さん、そして私を盗撮したおじさんは人目が飛び交う中駅事務室に入った。この状況だと、私が被害者であることは周りに把握されているだろう。
恥ずかしくなり、顔をうつ伏せる。
駅事務室の奥の方へと連れてこられた。警察官よりも険しい顔をしている山下さん。
きっと警察官は、こういう事件には何度も携わっているから特になんの感情も起こさないのだろう。
そう思うと少し悲しくなった。
「ここまで連れてこられて、まだ黙り貫くつもりかよ」
「こらこら君、落ち着きなさい」
おじさんの胸ぐらを掴む山下さんを引き離そうとするベテラン風警察官。その手を払いのけ、おじさんに向けられていた険しい顔は警察官の方へと移った。
「知り合いの女が被害に遭ってんだ、落ち着いてられっかよ!」
「っ!!」
山下さん…
私への好意の過度な大きさから一時期彼のことをけん制していた。だけど、私のためにこうして感情をむき出しにして怒っている姿を見ると、あの時の山下さんが私の記憶からすーっと姿を消していく。