10年愛してくれた君へ【続編】※おまけ更新中
「とりあえずこれ見てくれ。こいつの携帯のデータフォルダだ」


先ほど山下さんの表情を崩したそれを警察官に見せると同時に、これで言い逃れはできないだろうと、キッとおじさんを睨んだ。


「あー、ダメだねこりゃ」


「かなり撮影回数が多いですね」


警察官が口々にする。きっと、私だけではなく、多くの女性が被害に遭っているのだろう。


「ご、ごめんなさいぃぃっ」


おじさんは観念したのか、ようやく自分の罪を認めた。その後何度も何度も泣きながら私に謝罪の言葉を述べた。深く深く頭を下げて。


私は被害者だが、なんだか申し訳なくなってきた。


その人は半年前から同じような行為を繰り返していたが、警察に捕まったのはこれが初めてだと言う。


『絶対に、もう二度としないでください』


その人に対して初めて口にしたのはそんな言葉だった。








「許すとかまじで考えらんねーんだけど」


「…まぁ、触られたわけじゃないですし」


「お人好し通り越して呆れるわ」


バイト先まで山下さんと並んで歩く。この日はなぜか、歩幅を私に合わしてくれているように感じた。山下さんの不器用な優しさなのだろう。


「このままバイト大丈夫なのかよ」


「はい、大丈夫です。あの山下さん、今日は本当にありがとうございました。初めてされたことで、正直怖かったんですけど実感とか湧かなくて。でも山下さんがいてくれたおかげで安心しました」


「…まぁ、これからは気をつけろよ」


頭をくしゃっとかき、恥ずかしそうに顔を背けた。なんだ、案外可愛いところあるじゃん。




「竹内にはちゃんと言えよ。また黙ったまま喧嘩すんな」


「…はい、ありがとうございます」


今までの強引な山下さんが嘘のようだ。本当の彼は一体どちらなのだろうか。


…まだ、私のこと、好きなのかな。



「あの、山下さん?」


「…」


こちらの方は向かず、じっと前を見つめたまま。私はそのまま言葉を続けた。


「その、まだ、私のこと…」


「好きだけど?」


一瞬だけ目があった。やっぱり、サラッと言っちゃうんだ。


「あ…は、はい」


なんだろう。今ものすごく恥ずかしい。
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