片翼の運命

思えば、わたしが吸血鬼と知る前から彼の体温は温かった。

「じゃあ、わたし自販機に寄って帰るから」

何となくこのまま教室に帰るのは気まずくて、そう告げた。

「美衣ちゃん」

「……名字呼び捨てで呼んでほしい。その呼び方だと、目立つし……」

せめてものお願いを口にする。彼は少し口を噤んで、「わかった。学校ではそうする」と言った。

なんだか調子が狂う。彼が美衣ちゃんと言うと、昔に戻ったような、子供っぽく感じられる。

「俺のことも名前で呼んで」

「わかってる、望月くん」

そうじゃない、と彼は人差し指を自分に向けた。


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