寄生虫
「大丈夫?」


「うん。全然大丈夫だよ」


あたしは笑顔で返事をした。


だけど真尋は真剣な表情を崩さない。


「あたしの知り合いにアトピー性皮膚炎の人がいるの。その人、いつも体のあちこちがかゆいらしくて、こんな風にかきむしってる」


「あたしは、アレルギーじゃないから」


心配する真尋にあたしはすぐそう言った。


アレルギーじゃないからこそ対処の方法がなくて困っているのだけれど、それは顔には出さなかった。


その時教室内に元気の良い「おはよう!」という声が響いて、あたしと真尋の会話はそこで途切れた。


内心ホッとしながら声のした方へ視線を向けると、克哉だった。


「おはよう克哉」


真尋がすぐに返事をする。


「おぉ、おはよう」


真尋の頭をポンッと撫でる克哉の額には汗が滲んでいた。


「走って来たの?」


そう聞くと「朝練してきたんだよ」と、克哉。


「今日、朝練なんてあった?」


真尋が首を傾げてそう聞いた。
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