【短】スウィートドーナッツ


お気に入りの歌を口ずさみながら、坂を下る。

沈みかけの太陽が、最後の力を振り絞って、町をきれいなオレンジに染めていた。


坂のてっぺんからは、町が一望できる。

そこからは、予備校も見えた。


小さな灰色のビル。

大きくとられた窓には“春季講座受講生募集!”と、ひとつの窓に一文字ずつ紙が貼られていた。


予備校が近づくにつれ、私の胸の鼓動も早くなる。



もうすぐ、先生に会える。


< 3 / 30 >

この作品をシェア

pagetop