【短】スウィートドーナッツ



「美央ってば、今日も予備校行くの?」



学校から帰って来るなり、どたばたと私服に着替える私に、お母さんが問う。



「うん、今日は土曜日だもん! 自習室が使えるから、早く行く日なの!」



テキストとノート、テーブルに出してあったパンを適当にかばんに詰める。

クリームパンがいいと言っているのに、お母さんはいつもあんぱんを買ってくる。



「ふーん。まぁ、それだけ勉強してくれるなら、お母さんも嬉しいけど。行ってらっしゃい!」


「行って来まーす!」



私は勢いよく家を飛び出し、自転車にまたがった。

額にうっすらと浮かぶ汗すら、今は全く気にならない。

それくらい心が弾んでいた。


ウォークマンの電源を入れ、自転車を走らせる。


家の近くにある小学校を通ると、もう桜が咲いていた。

近ごろ急に暖かくなったと思ったら、もうそんな時期。


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