干物ハニーと冷酷ダーリン
『川本、自分の企画に力を入れるのはいいが現実的ではないぞ』
「なっ!現実を分かってないのは大平さんですよ!忘れたんですか!?営業が渋って部数を大幅に下げた時の事。またあの二の舞にするつもりですか!」
『それとこれとは別の問題だろ!』
「一緒ですよ!ですから営業の判断で下げるのは検討違いだと言いたいんですよ!漫画をよく分かっているのは編集部ですよ!」
『書店の売れ筋を分かっているのは営業部だ!皆が皆この漫画を好んで買うわけじゃないんだぞ!書店によっても扱っているジャンルの部数も違うんだ』
「書店に交渉して置いてもらうのが、営業の仕事ですよね!それをしないで端から部数を下げろなんて、あまりに傲慢じゃないですか」
『なんだと!ならそれで在庫を抱えたらどうするつもりだ!』
「だから!始めから売れない漫画を出してるんじゃないんです!売れるから言ってるです!」
徐々にヒートアップしてきた、あたしと大平さんは流れで椅子から立ち上がり、テーブルに両手を付いて息を切らせていた。
『……お前も落ち着け、人の事言えないぞ』
先程とは逆に、今度はお互いに上司が部下を宥めると言う逆転現象が起きていた。