干物ハニーと冷酷ダーリン
控え室に白田先生を残し、書店に戻ると大平さんと相崎さんがレジ近くにあるパソコンと向き合っていた。
『おーい、川本。これ見てみろよ』
「うわっ!今日だけで凄い伸びてますね」
画面には今日発売の新作の他、白田先生の作品の売れ行きが表示されている。
『やってくれるなぁ。川本』
「だから言ったじゃないですか」
『増刷かけるか?』
「そうですねぇ、午前中にここまで伸びたって事は、午後には落ち込むかもしれないですねぇ」
『やけに慎重だな』
「いえ、その分他の作品が動いているので、そっちを補充した方がいいかもしれないです。全体的に白田先生の作品の在庫ってどれくらいありますか?」
隣に居た相崎さんに確認をとってもらう。
傾向からして、新作と一緒に別の作品も同時に購入している人がほとんどだ。
在庫があるなら、そっちの方も並べた方がいいかもしれない。
増刷までとはいかないかもだけど、売り上げを伸ばす絶好のチャンスだ。
「ところで、あの。黒崎さん見ませんでしたか?」
『ああ、ついさっき慌てて出てったぞ。原稿が飛んでったって』
「……はっ?、、、えっ、黒崎さん居なくなったんですか!?」
信じられない。
本当に何してくれちゃってるの、あの人。
それに誰の原稿が飛んだ?
今月の増刊号に黒崎さんが担当の先生も入ってましたけど。大丈夫ですよね?