干物ハニーと冷酷ダーリン
『ストレートに聞きますね。彼氏いますか?』
あー、んー、はい。
この人は、硬派な皮を被ったチャラ男だった。
「……あ、はい。います」
少女漫画編集者を6年やってると、常に頭の中で恋愛のネタを考えているだけあって、それ程経験がなくても、その後の展開が手に取るように分かってしまうのは職業病である。
なんとも、恋愛に不向きな職業だ。
『嘘ですね?』
「……質問は1つのはずですよ」
『嘘は、カウントしません』
「1つは1つです」
どうだ。6年間に身に付けた屁理屈の威力。
見たか、あたしだってろくに営業部と張り合ってきたわけじゃない。
でも、まさかここに来て、こんな形でナンパらしき標的にされるとは思いもしなかったけど。
久留米先生。なんだか今日だけでかなりのネタが生まれましたよ。
今日、伺う時にお聞かせ致します。
『なら、連絡先教えて下さい』
「お断りします」
『強情ですね』
「あたしの長所なんですよ」
にこにこ、にこにこ。
にこにこ、にこにこ。
この人、食えない奴だ。